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2007年08月09日

●電子定款の初体験

本日当事務所としては、定款を「電磁的記録の認証」してもらいました。
いわゆる「電子定款」の作成という手続きです。

印紙代4万円が免除になるのが話題ですが、行政書士の側からすると、電子証明書やAcrobatを購入しなくてはならないので、費用負担が若干あります。
初期費用といえば初期費用なので、数多くこなせばいい話になりますが。

1)手続きとしては、ワープロソフトで作成した定款をPDF化。
 ↓
2)PDFに電子署名付与プラグインを用いて署名。
 ↓
3)法務省オンラインシステムで公証役場に対して申請

という流れになります。
日行連のマニュアル掲載サイトが工事中なので、若干手間取りましたが…

行政書士用電子証明書(ビジネス認証サービスタイプ1-G)の出番は、2と3。

2でPDFに署名した後、3でブラウザ上でPDFをアップロードしたうえに、それに電子署名をするという二度手間。

しかも、3の手続きにいたっては、Javaの機能を使っているとはいえ、ブラウザ上で動かしているものだというのに、ブラウザにインストールされた電子証明書を使わず、電子証明書ファイルから直接署名を行うようになっているのはどうにも合点がいきませんでした。

とまれ、今回が初めてだったもので手慣れないところもありましたが、今後はできれば顧客の出費が抑えられるように、電子定款も活用していってみたいものです。

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2007年06月04日

●登録免許税と、設立関係書類と

会社法関係の備忘記事。

たまにしか書かないのに、こんなのですいません。

商法時代にあった閉鎖会社の典型例、
 取締役会+監査役+譲渡制限(取締役会の承認)
を、会社法になってから、
 取締役会の廃止、監査役の廃止
を行う場合の登録免許税は、
 取締役会の廃止 → 3万円
 監査役の廃止+譲渡制限の変更 → 3万円
 監査役退任による役員変更 → 1万円
の計7万円です。

ちなみに、取締役の員数を減少させるために、監査役を廃止せず、取締役会を廃止したとしても、自動的に譲渡制限の項目を変更する必要があるので、最低でも6万円(同時に取締役を退任、辞任する者がいる場合は7万円)になります。
また、監査役のみを廃止させる場合には、監査役の設置しない取締役会は認められないため、同時に取締役会の廃止も必要となりますのでご注意ください。


取締役会と譲渡制限が同じ税区分になっていればこういう問題はおきないんですが、若干、不条理な気がします。

ついで、設立関係書類。
譲渡制限会社の発起設立の場合、
・通帳の写しに設立時代表取締役の証明を合綴したもの
・設立時資本金が満足された旨の証明
を添付する必要があり、会社法施行直後においては、この証明印は、設立時代表取締役の「個人実印」を認めていたようですが、最近になって対応が変更になって、法務局に届け出るいわゆる「会社実印」を捺印したものでないと登記を受け付けないということになったようです。

会社設立での印鑑の押し間違えにはご注意ください。

2007年02月14日

●商業登記が激減?

先日のこと、当事務所の提携司法書士事務所に依頼した登記が、すごい早くに戻ってきました。
聞くと、出した翌日に法務局からあがってきたとのこと。

今年に入ってから、小田原の法務曲全体でまだ200件前後しか商業登記を受けていないとのことです。
平均的に考えれば、1日あたり10件にも満たない数になるわけですから、翌日にあがってきてもおかしくはない気がします。

昨年、会社法施行になって、任期満了に伴う役員変更が減ったのは確かですが、ここまで如実だとちょっとびっくりしてしまいますね。
ま、登記が早くあがってくるにこしたことはないので、早く処理してくれるのはありがたいことなのですが。

会社法関連のこぼれ話でした。

2006年11月20日

●募集株式の発行の類型

忘れた頃に、会社法の備忘録です。

今回は募集株式の発行について。
いわゆる「増資」です。

商法下においては、別の手続であった
・公募増資
・第三者割当
が一本化され、「募集株式の発行」手続となりました。
また、株主へ持分比例により割り当てる方法も明文化されました。
(比例配分しない方法による場合は、株主のみが募集株式を引き受ける場合でも、通常の募集株式の発行手続を経なければなりません。)

募集株式の発行手続は

(1)募集事項の決定(株主総会or株主総会から委任した取締役会)
 ↓
(2)募集株式の引受の申込み受付
 ↓
(3)引き受けの申込みに基づく株式の割当(株主総会or取締役会)
 ↓
(4)出資の払込・登記手続

という流れになります。
ですので、取締役会非設置会社においては、都合2回の株主総会を開催する必要があるようです。
なお、株主比例の場合は、割り当てる株数があらかじめ確定することから2回目の株主総会は不要となりますが、募集事項を払込期日の2週間前までに各株主に通知する必要があります。
また、例外規定として(2)~(4)の手続について「募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しない。」(会社法§205)という規定もありますが、申込みに代えて契約締結するものですのであまり内容的には変わらないものと思われます。
おそらく、スポンサーなどによる資本増強の場合などが考えられると思いますが…。

2006年10月23日

●利益剰余金の資本組み入れ

会社が長年の間積み重ねてきた、利益剰余金・当期未処分利益を資本に組み入れることを顧客に提案していたのですが、会社法の施行に伴って「できなくなった」と解釈されているようです。

もともと、

旧商法
第二百九十三条ノ二 会社ハ利益ノ処分ニ関スル株主総会ノ決議ヲ以テ配当ヲ為スコトヲ得ベキ利益ノ全部又ハ一部ヲ資本ニ組入ルルコトヲ得

と明記されており、会社法施行後も、
会社法
(資本金の額の増加)
第四百五十条 株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
 一 減少する剰余金の額
 二 資本金の額の増加がその効力を生ずる日

という規定なので、問題がないと思われたのですが、会社計算規則まで調べてみると
会社計算規則
(資本金の額)
第四十八条  株式会社の資本金の額は、第一款及び第四節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が増加するものとする。
一  法第四百四十八条の規定により準備金(資本準備金に限る。)の額を減少する場合(同条第一項第二号に掲げる事項を定めた場合に限る。) 同号の資本金とする額に相当する額
二  法第四百五十条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第一項第一号の減少する剰余金の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)に相当する額
(太字引用者)

と規定があり、「資本準備金」「資本剰余金」のみが資本に組み入れることとなってしまったようです。
もともと、資本準備金などは資本取引(増資、合併等)によって発生するものなので、これに限定しようとするのは理解できるのですが、ただ、法文で制限されていなかったものが「規則」で制限されてしまうのは若干理解に苦しみます。
旧商法下においてできていたものができなくなってしまったのであれば、なおさらです。

方策としては、

利益剰余金を配当する→未払配当として負債に計上する
  ↓
未払(未収)配当という債権を株主が現物出資(DES)する。

ということが考えられますが、これでは、配当した時点で配当所得として株主個人に課税されてしまいます。

規制緩和の旗印のもと会社法が施行されたと理解していたのですが、こういった目立たないところで規制が増えるのはあまりよいこととは思えません。

2006年07月28日

●小会社・公開会社の監査役

神奈川行政書士インターネット同好会(略称:KGID)とゆーMLに情報が流れたのですが、かなりびっくりした情報です。

曰く、
小会社(資本金1億円以下、負債の額が200億円未満)の公開会社(株式に譲渡制限の付されていない会社)の監査役は、会社法施行の日つまり5月1日において自動的に任期満了退任する

そのため、新たに監査役を選任し、就任(重任)登記を行う必要がある。

とのことでした。

気になって調べてみたのですが、なかなかいい情報源がみつからなかったのですが、
司法書士井本事務所というサイトで根拠を見つけることができました。


http://www.imoto-office.com/nc_yakuhen.htm#kansa_manryo

詳細は、リンク先を参照していただきたいのですが、
従来、会計監査のみを行っていた監査役が、会社法の施行に伴い、自動的に業務監査を行うことになるため、定款変更と見なされ、会社法336条4項3号の規定により任期満了退任となるとのことでした。

会社法
(監査役の任期)
第三百三十六条 
4 前三項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。
 一 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
 二 委員会を置く旨の定款の変更
 三 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更
 四 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更

会社法の施行によってさまざまな支障がでていますが、これについてはかなり寝耳に水の感があります。
はたしてしっかりした周知がなされていたかも疑問です。

監査役設置会社、取締役会設置会社の職権登記については、会社の機関設計を変更しない限り費用がかさむことはありませんが、この問題は費用に直結する問題です。

ここまでする必要があったのか若干の疑問が残ります。

2006年06月13日

●特例有限会社の登記の手続

書籍紹介でお茶濁し。

特例有限会社の登記の手続
鈴木 智旦著
日本法令 (2006.6)
通常24時間以内に発送します。

会社法により株式会社制度に包摂された有限会社制度ですが、有限会社のさまざまな登記関係の書類様式等が掲載されています。

議事録などは会社法によって、
・議事録作成者
・出席取締役
などの明記が義務づけられているのですが、その点などもきちんとふまえて議事録の例が掲載されていますので、株式会社の議事録作成などにも役立つことと思われます。

まだ、商業登記総覧などが出そろっていないので、議事録の参照にはとりあえず適した本かと思います。

2006年06月05日

●有限会社→株式会社

さてさて、今日は、有限会社のお話。

有限会社は会社法施行に伴い、株式会社制度のなかに包摂され、「特例有限会社」として存続することとなりました。

「有限会社」という商号をつかっているうちは
・任期規定なし
・決算公告義務なし
など、今までの有限会社と同じような扱いを受けます。
ただし、最高決定機関は、社員総会ではなく、株主総会となりました。

株式会社制度に包摂されていますので、株式会社を名乗るのも自由です。
その際は、「商号変更」手続にあたりますが、登記上では、有限会社の解散と株式会社の設立を同時に行うという、今までの有限会社→株式会社の組織変更手続と同じようなものになります。

そこで注意すべきなのは、株式会社にすることによって任期規定を追加する必要があるのですが、その任期の始期は、
・有限会社時の就任時(設立時からいるときは設立時)
だとのことです。

有限会社の解散が伴うので、株式会社に変更した日を始期とすると勝手に思いこんでいたので、ちょっとびっくりしました。
そこで、就任後(設立後)10年以上経っている会社はどうするかというと、商号変更した瞬間に任期満了を迎えるので、その際の株主総会は
(第1号議案) 定款変更に関する件(商号変更)
(第2号議案) 任期満了に伴う役員選任の件
としなければなりません。
ご注意ください。

2006年05月22日

●決算公告の義務化?

さて、相も変わらず、会社法のおはなし。
それしかネタがない感じになってきてしまいました(汗)

会社法施行にともなって、決算公告につき罰則規定が設けられました。
旧商法においても義務規定だったのですが、罰則規定がなく有名無実となっていたのですが、罰則規定がついてあわてふためいている中小企業の方々がいらっしゃるようです。

今月や来月、3月末決算の会社が定時株主総会を開くことになりますが、その決算について、決算日を基準にすると旧商法、定時総会期日を基準にすると会社法となるため、どちらを基準にしたらいいのかという質問がありました。

そこで確認したところ、

会社法整備法(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)
(計算に関する経過措置)
第九十九条  施行日前に到来した最終の決算期(次条において「直前決算期」という。)に係る旧商法第二百八十一条第一項各号に掲げるもの及びこれらの附属明細書の作成、監査及び承認の方法については、なお従前の例による。

附則
(罰則の適用に関する経過措置)
第三十九条  この法律の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこ法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

となるため、決算日基準が宣言されており、今年4月末決算までは、旧商法の規定によることとなり、決算公告を怠っても、罰則にはならないとのことでした。

ただ、罰則はなくても義務は義務なので、やらなくてはならないのですが(苦笑)

個人的には、今年1年やらなかったということではなく、5~10年ごとに一斉調査を行って、1回もやっていない会社に対して罰則を適用するという扱いになるかとは考えていますが、実際のところは定かではありません。

2006年05月15日

●会社設立完了

5月1日に設立の申請をだした会社ですが、本日、登記が完了して謄本(履歴事項証明書)ができあがってきました。

とりあえず、提出した書類で問題はなかったようで一安心です。

本日が補正日ということで、午前中にはあがっていると思っていたのですが、まだできあがっておらず、お願いしたら午後一番でだせるように計らってくれました。
登記官とも話しをしたのですが、やはり会社法施行の5月1日設立した会社が多かったらしく、それに手間取ったのと、今まであった会社に対する職権登記が小田原管内でも1万件あるので、それに時間をとられたために、登記に時間がかかったとのことでした。

職権登記に関して云えば、ほとんどが定型的なものだから、コンピュータ化しているのでパッチをあてればすぐに変更できるような代物だと期待したのですが、そうでもなかったようです。
ま、それで問題が起こってしまえば、それはそれで重大な事件になってしまうので、万全を期しての対応なのでしょうが…。

2006年05月10日

●1人取締役で代表取締役?

さてまたまた会社法ネタです。
同業者のメーリングリストで話題になっているのですが、取締役会非設置会社で、1人しか取締役を置かない場合でも、代表取締役を設置することができるというのです。

取締役会非設置会社は、今までの有限会社に組織がにているのですが、

有限会社法
第27条 
1 取締役ハ会社ヲ代表ス
2 取締役数人アルトキハ各自会社ヲ代表ス
3 前項ノ規定ハ定款若ハ社員総会ノ決議ヲ以テ会社ヲ代表スベキ取締役ヲ定メ、数人ノ取締役ガ共同シテ会社ヲ代表スベキコトヲ定メ又ハ定款ノ規定ニ基キ取締役ノ互選ヲ以テ会社ヲ代表スベキ取締役ヲ定ムルコトヲ妨ゲズ

となっており、第3項で2人以上いる場合(第2項)に限り、代表取締役を定めることができるとなっています。
対して、会社法では

会社法
(株式会社の代表)
第349条  取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2  前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。
3  株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。
4  代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5  前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

となっており、3項に「前項の場合」(取締役が二人以上ある場合)という言葉が抜けており、それが根拠となるようです。
実際、それが認められるかどうかはともかくとして、「1人しか取締役がいない場合でも、代表取締役を設置することができる」ということで大意は決せられているようです。

会社を代表する者として「代表取締役」=「社長」というイメージがありすぎて、1人取締役で会社の代表権を持つ者の肩書きが「取締役」だったことに違和感を感ずる人が多かったのは確かですが、取締役が1人しかいない会社において、その会社を代表する者はその取締役においてほかはなく、それ以外に、わざわざ代表取締役の設置を認めるというのは、法的には何ら意味をなさないものだと思われます。

そういった巷間のイメージにおもねった法体系では、法的安定を得られるとは正直思えません。

2006年05月09日

●会社法の施行

が先週の1日にされましたが、連休などもあって大きな動きはまだみられません。
2日の朝刊には、合同会社に組織変更した会社があるなど報じられていましたが。

そんな中、今日、はじめて会社法施行後の会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)をみることができました。
今までもあった会社なのですが、会社法の施行に伴って職権登記された部分としては
・株券を発行する旨の定め
・取締役会設置会社に関する事項
・監査役設置会社に関する事項
の3点でした。

今までの商法上の株式会社だった会社は、おそらくこの3点が追加されているものだと思います。
旧商法時代にも株券不発行の定めがあるので、必ずついてくるのは、下2点でしょうが、将来的には定款変更などで、商法時代につくられた株式会社でも取締役会や監査役を廃止するような会社がでてくることと思われます。

2006年02月17日

●会社法施行規則

「会社法施行規則」,「会社計算規則」及び「電子公告規則」について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji107.html

会社法の施行が5月頃ということで間近に迫ってきました。
といっても、残念ながらまだ現実には施行の日が確定せず、ただ「5月1日」になるのではないかと憶測だけで動いてしまっている状況です。

ただ、こうした規則などが公表されてきているところをみるといよいよという感じがいたします。

2005年08月11日

●法人実在説

昨日の話からの続きです。

「会社はこれからどうなるのか」の中に、法人の性質について2つの説が紹介されています。

・「法人というのは人の集合に対して与えられた単なる名前にすぎない」という法人名目説
・「法人とはそのものが社会的な実体として存在しているものだ」という法人実在説
という2説です。

今までは、法人名目説が有力でしたが、「会社」が経済に寄与する比率が高くなってきており、法人実在説へとシフトしてきていると考えられています。

「会社法」においては、会社自体が他の会社の無限責任社員になることが認められているのも、名目説では考えられないことです。
また、会社が出資して、子会社を設立する際に、親会社の目的に書かれていない目的をもった子会社を設立することができるという「無制限説」もでてきているようです。

こうした法理論は、法人実在説を基準にした考え方であり、経済の要請が法理論を変更しているものだといえましょう。

つまり、商法・会社編が独立して、会社法になるのではなく、根本の考え方自体が変化しているということを理解することができれば、「会社法」の理解も進むのかと思われます。

2005年08月10日

●会社はこれからどうなるのか

上記「会社はこれからどうなるのか」を読みました。

会社という「法人」のあり方について、今までの歴史観などもふまえながら書かれています。
特に、現在進行中の産業資本主義からポスト産業資本主義への流れにおいての「会社」のあり方が緻密に紹介されており、興味深く読むことが出来ました。

「法人」という存在が、法が便宜的に人格を与えていることにより「モノ」であり「人」でもある二重の側面をもつものであり、モノとしての側面を重視するか、人としての側面を重視するかによって、法人に対する考え方が変化し、それが、経済制度そのものを変化させていくと考えられています。

来年に施行が予定されている「会社法」の成立の過程によっても議論されてきたものなのだろうと思います。

法律論ではなく、経済論からの「会社」論を組み立てています。

2005年07月09日

●有限責任事業組合(LLP)

湘南支部の研修会におじゃまして「LLP」の話を聴いてきました。

この有限責任事業組合(Limited Liabirity Partnership=LLP)というもの、民法上の組合の特例として存在するものとして先般成立し、今年中には施行される向きになっているようです。

しかし、このLLPですが、民法上の組合の特例のため、法人格が付与されず、設立要件ではなく、対抗要件としての登記が求められています。
また、法人格がないために権利能力の主体となれず、LLPとして行う契約等はすべて組合員全員に帰属するため、組合の負う債権債務はすべて組合員全員の連帯債務と解されてしまうようです。
残念ながら、この点と、出資者の有限責任とがどのように折り合いをつけることができるのかが、あまり明確にはできていないようです。

施行後、数百件の成立が見込まれているようですが、どこまで需要がある制度なのかは、若干疑問をもちました。

2005年06月29日

●「会社法」成立

長らくご無沙汰してしまいました。

とりあえず、走り書き程度になってしまますが、「会社法」が成立したようです。
来年中の施行を目指していくとのことで、これから施行規則、施行令などの整備や、関係法令の改正などが多くでてくるのでしょうか。

2005年05月16日

●インターネット登記情報提供サービス

5月10日に、登記情報をネットで閲覧できたら…という話をしていましたが、すでにできあがっていたそうです。

http://www1.touki.or.jp/gateway.html

不動産、法人の登記が確認できるとのことですが、費用が

(1) 不動産登記情報(全部事項)  950円/筆・個
    (登記手数料870円(国への納付分(非課税))及び協会手数料80円(消費税及び地方消費税を含む。)

(2) 不動産登記情報(所有者事項)  440円/筆・個
    (登記手数料360円(国への納付分(非課税))及び協会手数料80円(消費税及び地方消費税を含む。)

(3) 商業・法人登記情報(全部事項)  950円/法人
    (登記手数料870円(国への納付分(非課税))及び協会手数料80円(消費税及び地方消費税を含む。)

とのことです。

ただ、この情報に関しては、認証文がつかないため、法務局で入手する「要約書」とほぼ同様に法的な証明力をもつものではありません。
要約書1通500円と比較すれば、かなり割高な印象を受けます。

これが法務局の電子証明書を付したPDFファイルなどで発行されたりして、法的な証明力のあるものであればよいのですが…。

2005年05月12日

●会社法案

2月に引き続き、明後日には、支部の総会に先駆けての研修会で新会社法を説明しなくてはいけなくなってしまったので、これから会社法案とにらめっこです(予定)。

レジュメは2月のままですが(爆)。
要綱案からほとんど変更もないし、変更点についてはとりあえず口頭で説明していこうかと思います。

ただ、やはり法案がでてしまっている以上、条文に即した説明も必要なはずなので、参考書として、

の本をamazonに月曜に注文したのですが、未だ発送した旨のメールが来ません(泣)。

んで、別経由で注文した、

が今日、入手できました。
しかし、この本、714円(本体680円)の割には、A5版327頁でなかなかよい装丁をしてくれています。
条文をそのまま印刷したようなものではあるのですが、必要なところでは1行解説が加えられていて、親切な設計になっているので、値段と相俟ってなかなかお得な本かもしれません。
上の書籍がまだ来ていないので比較はできないのですが、これはおすすめです。

2005年05月10日

●法務局の統廃合

横浜地方法務局のうち、厚木支局秦野出張所を廃止して、秦野市の登記を厚木支局へ、中井町の登記を小田原支局へ統合するという動きがあるそうです。

今年になってから、松田出張所もすでに小田原支局に統合されており、徐々に法務局を減少させていく動きが目立ってきています。
これは登記のコンピュータ化を促進するために一元的に運用するためのものと聞き及んでいます。

商業・法人登記情報交換システムによって、全国の登記事項証明書を入手することができるようになるのでしょうが、肝心の法務局が遠い存在になってしまっては意味がありません。
法務局は少なくてもかまわないのですが、それならば、端末などを設けて簡単に登記事項証明を入手できるようにしたり、オンラインでの閲覧を可能にしたりということを視野にいれてもらいたいものですが…。

(参考)商業・法人登記情報交換システムについて

2005年04月18日

●M&A用語の基礎知識

ライブドアとフジテレビとがニッポン放送の株取得問題について、「和解」したとのこと。
とりあえず、最近は沈静化してきてはいたので、なによりです。
ただ、「戦後処理」として、お互いの経営陣は、今まで起こしてきた問題への株主はじめ関係者への説明に苦慮するものとおもいます。
たとえば、フジテレビは、TOB価格の5950円と、ライブドアからの取得価格(6300円)との差異の根拠や、なにより、今までの資本の逆転現象を放置してきたことの懈怠責任というのもあるでしょう。
対して、ライブドアは、リーマンへの800億、フジへの440億、合計1240億という大幅増資による1株あたり利益の希薄化、結果的にニッポン放送株すべてを譲渡してしまうためこれまでの騒動がマネーゲームではない(グリーンメーラーではない)ことの証明などがあるでしょう。

フジ、ニッポン放送は6月に株主総会があり、説明の場がすぐそこに迫っています。

閑話休題。
この騒動のなかでいろいろと出て、みなさん勉強したであろうM&A用語。
SBIがでてきたあとのここ1月はあまりきかれなくなってしまいましたが、覚えていらっしゃる方ははてさてどのくらいおられるのでしょうか。

・ホワイトナイト
・クラウンジュエル
・新株予約権
・TOB
・パックマンディフェンス
・ゴールデンパラシュート
・焦土作戦
・時間外取引
・持ち株比率
・議決権

この10個、10点満点として、みなさんは何点くらいですか?

2005年03月19日

●社外取締役

東京のNPO、社外取締役候補の紹介サービス (NIKKEI.NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050318AT1D1806618032005.html

今回のニッポン放送問題に限らず、脚光を浴びている「社外取締役」ですが、代表取締役が取締役に対して指示、命令をするなど、本来とは逆方向のことが多い日本の会社構造のなかでは、株主利益の代弁者として、重要な位置を占めるものとなってきます。
取締役会が株主の利益に反すると思われるような経営判断をしようとするときに、社外取締役が株主利益を俯瞰的に判断し、取締役会において発言していくことは、これもまた予防法務的手段としては有効なものだと思えます。
#たとえば、ニッポン放送の新株予約権発行に関する地方裁判所の決定中では、社外取締役の存在を一つの論点としてあげていました。

しかし、全国社外取締役ネットワークのサイトを見てみると、

社外ネットの会員には、社外取締役や企業経営者の以外に、社外取締役の候補者となりうる監査役役(常勤、社外含む)、専門職(弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、証券アナリスト等)、大学教授、研究者、コンサルタントなど、さまざまな経験をお持ちの方が広く参加しています。

となっており、行政書士が専門職という枠組みの中にはいってきておりません。
残念なことです。