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(9)行政書士の代理権について②

1号代理権の検討

 まず、法第1条の3第1号の「行政書士が作成することが出来る書類を官公署に提出する手続を代理すること」(以下、1号代理権という。)という条文をどう読むかですが、この解釈を巡り、「意思代理」なのか「事実行為の代理」なのかについて行政書士の中で意見が分かれています。
 条文を素直に読むと「申請手続代理」と言うことになるのですが、これまで、行政書士の法定代理業務はなかったので、判例があるわけはなく、また、行政法などでも行政手続一般の代理に関する学説はほとんどないのが現実なので、ここでは、隣接法律専門職である司法書士の登記申請代理に関する判例・学説を中心に検討を進めることとします。

 「意思代理」であると主張される議論の論拠となっているのは、『公法上の代理も「代理人の意思表示(法律行為)の法律効果が本人に直接帰属すること」である点においては私法上の代理と同一である。』(行政書士とうきょう増刊号 2003.9 P.10)という考え方なのですが、この点では、行政手続の代理において民法第108条の双方代理を禁止していないことに注目する必要があります。

 この双方代理を巡る判例としては、司法書士の登記申請代理に関する双方代理を認めた
 ①大判昭和19年2月4日の判決及び
 ②最判昭和43年3月8日の判決
があり、その判旨は、

 ①仮に右双方代理の事実有りとするも元来登記申請は法律行為にあらず而も登記義務者にとりては義務の履行に他ならざるが故に右の代理行為は、民法第百八条の規定に違反することなくその双方代理なるの故を持って無効となることなきものとす。
(大判昭和19年2月4日民集23-42)

 ② 登記申請行為は、国家機関たる登記所に対し一定内容の登記を要求する公法上の行為であって、民法にいわゆる法律行為ではなく、また、すでに効力を発生した権利変動につき法定の公示を申請する行為であり、登記義務者にとっては義務の履行にすぎず、登記申請が代理人によってなされる場合にも代理人によって新たな利害関係が創造されるものでないのであるから、登記申請について同一人が登記権利者、登記義務者双方の代理人となっても、民法第108条本条並びにその法意に違反するものではなく双方代理のゆえをもって無効となるものではないと解すべきである。
(最判43.3.民集22-3-540)

というものです。

 学説は、
①登記申請は公法上の非訟行為であって私法上の法律行為に関する民法108条の当然の適用はない。とするもの、
②登記申請行為にも民法108条は適用されるが、登記申請者間に対立を欠くから、同条但し書きに該当する。と説くもの、
③登記申請は、私法上の行為でもなくまた法律行為でもないから形式的に民法第108条の適用はない。と説くものなどがあります。

 登記申請と一般の許認可申請とをまったく同一に扱うことは出来ないと考えられますが、「行政機関たる公務所に対し一定の行政処分を請求する公法上の行為」という点においては同様の性格を有するものであり、その限りにおいては、申請手続代理は、「私法上の代理と同一」ではないと解するべきであると考えられます。

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