小関ブログ

『「法令遵守」が日本を滅ぼす』を読んで(1)

今日も小田原は穏やかな晴れです。青空に白い富士山が綺麗です。桜の蕾も膨らみ始めているようです。
昨日夜のニュースで秋田の吹雪の様子が写っていました。雪が真横に飛んでいく様はすごいものですねぇ。日本海側は各地で冬に逆戻りだそうです。が、市民は、かえって「ホッとした。」というコメントをしてました。なんだか申し訳ないような・・・
先週金曜日の「素朴な疑問2」で紹介した横浜桐蔭大学大学院教授郷原信郎氏著の『「法令遵守」が日本を滅ぼす』が昨日届いたので、速攻で読了しました。かなり共感できる部分があり、すらすらと読み進めることができましたが、読んでいるうちにいまの日本社会の在り方にだんだん腹が立ってきました。
この本の命題は、“はしがき”での

日本は、決して無法国家ではありません。明治期以降、欧米から近代法が輸入され、大陸法と英米法が混合した精緻な法体系が確立された“法令国家”です。しかし、戦後の経済復興、高度成長を支えた官僚統制的経済体制の下での法令は、現行憲法下での天皇と同様に「象徴としての存在」にとどまり、その間、市民社会、経済社会における現実の機能は限られたものでしかありませんでした。それが、日本が本当の意味の法治国家になり得ない要因となったのです。

という指摘にあるように、日本は、諸外国にあまり例を見ない「非法治国家たる法令国家」であり、そのような社会の中で「法令遵守という意味のコンプライアンス」がもたらす弊害を明らかにし、その対処法を提示しようという試みなのだという理解をしました。
本の内容については、ここでくどくどと書くよりは是非皆さんにご一読をいただきたいと思います。

「法令遵守」が日本を滅ぼす
郷原 信郎
新潮社 (2007/01/16)
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私は、氏の言う「非法治国家たる法令国家」と言うことの意味を考えてみたいと思うのです。
日本という国家は、明治維新によってそれまでの「武士道」を捨てて、当時の列強に対峙し、仲間入りをするために近代国家になることを目指して大陸法と英米法の両方を取り入れて国家の枠組みを作り、富国強兵政策によって近代国家の仲間入りを果たしました。その後、第二次世界大戦の敗戦によって、アメリカの支配下に入り、戦後はアメリカの政策によってアメリカ型の市場経済体制と現行憲法の下での民主的な“法体系”を作ってきました。
つまり、明治期以前の農耕民族としての連綿と続いてきた日本人としての文化や暮らし方とは違った、つまり、社会の進展によって積み上げられた法体系ではなく、当時の支配層によって上から降ってきた法体系、しかも、狩猟民族の文化の中で培い作り上げられた法が日本社会に突然覆いかぶさって今日に至っているのだと思うのです。
従って、戦後も基本的な法制定や改正が殆どの場合アメリカを中心とした“外圧”によって為されてきたのだと思います。
以前、“談合”について書いたアメリカ人の論文を読んだことがありますが、そこには、「日本人の文化としての談合」が日本人の書いた文章以上に分かりやすく書いてありました。つまり、農耕民族である日本人は、自然を相手に農作物を育てるという作業の中で、ムラ社会を作って互いに協力し、話し合いながら物事を解決してきた「談合社会」であるということです。
今でこそ「談合」は、悪のイメージとなっていますが、以前は、日本社会の中で人々が共に助け合い、共存していくための手段(システム)として機能していたのであり、むしろ文化として定着していたということなのです。そして、その民族性はミーム(文化因子)となって日本人の脳の中に受け継がれているのだと思います。
だいぶ長くなってしまいました。まだ言いたいことを言えていないので、この続きはまた明日です。

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