今回から、私達行政書士にとって身近な『企業予防法務』について具体的に研究をしていきたいと思います。
20世紀後半、戦後の荒廃から高度成長、バブルという急成長をしてきた背景には、“義理人情”を重視する「暖かい社会」の中で、企業経営者の商法、労働基準法、税法などの違反が横行し、それによって成長が維持されるという現実がありました。
しかし、1990年代後半くらいから次第に企業の内部告発による不祥事が明るみに出始め、企業経営をめぐる社会的、法律的、経営的環境が大きく変わってきました。
最近では、雪印食品の内部告発による「狂牛病対策資金の不正受給」事件が記憶に新しいのですが、これらは、義理人情よりも“法律”を重視する「冷たい社会」の到来を示していると言えます。
すでに“事後救済・事後チェック社会”への移行が始まって、時代が大きく変わっているということの認識が欠けていると、経営者は、まじめな社員からの内部告発によって責任を追及されることとなります。
特に、中小零細企業の場合、オーナー経営者で同族会社であることが多く、従業員に対しても家族的意識を持ち、一方的に家族的貢献を要求している場合も少なくないようですし、法律に対する意識が希薄であるのが一般的です。
しかし、社内がうまくいっているときには、それほどの問題は起こらないのですが、一端問題起きると法的に許容範囲を逸脱していることが明らかになるケースが多いのも事実なのです。
経営者が個人資産を作ることに熱心で、労働者の権利を軽視していた場合に問題が起こり、基準監督署に内部告発をされた場合等に、“同じ釜の飯を食った仲間”などといっても通用しないのは当たり前です。
そうならないためには、中小零細の同族企業といえども個人と法人を明確に区分し、経営判断をするときには法的意識を持って次のポイントをチェックしなければなりません。
- 会社は、株主・出資者のものという認識を持っているか。
- 経営方針決定にあたり、法令、定款に違反していないか。
- 人事、労務管理にあたって、“満足管理”を実践しているか。
- 常に、合理的な判断で会社の最大利益を追求出来ているか。